今から約1300年ほど昔、スペイン(イベリア半島)へ北アフリカからイスラム教徒が移住してきました。その際、農業や製紙等の様々な技術・文化と共に、タイルの文化もスペインに伝わりました。
それらは半島南部から北部へと広がりながら、長い時間をかけて地元スペインの文化・技術と交じり合い、影響しあいながら各地で独自の発展をとげます。
イスラムの影響を色濃く残すアンダルシア地方の青と緑色で描かれた植物や鳥たち。幾何学模様や繊細なモチーフを色釉で描くクエルダ・セカ。また、素朴で伸びやかなモチーフを白色釉薬上に顔料で絵付けするマヨルカ水彩技法など。
それらは後々、イタリア(マジョリカ陶器/マヨリカ焼)を経由してオランダ(デルフト焼)やポルトガル(アズレージョ)などヨーロッパ各地へと広がって行きました。
スペインでは今も家々や公園、建物の外壁など街のいたるところで美しい装飾タイルを眼にすることができます。
また身近なものでは、食器や雑貨などの陶器が各地方によって独特の色彩やモチーフで絵付けされ、美しく生活を彩っています。
当工房で制作しているスペインタイルや陶絵付け作品は、すべてこうした伝統的な手描きの技法によるものです。
工場などで大量生産されるプリントタイルやシールによる転写絵付の陶磁器とは異なり、一つ一つの色合いや形、線などの風合いは異なりますが、約1000度の独自の焼成法で生まれる作品は経年変化や紫外線による褪色や擦れによる絵柄剥離などは起こしません。
皆様にもぜひ、ぬくもりのある手描き絵付け作品をお楽しみいただければ幸いです。
それでは、ここでスペインタイルの主な技法をいくつかご紹介いたします。
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